2011年5月17日火曜日

シュウキン - Shukin (Goldfish)

From "Goldfish and their culture in Japan" (1910) by Shinnosuke Matsubara

"Shukin" - In 1897 a new variety, having its own peculiarities, was produced by the following means: Oranda shishigashira, ten in number and 3 years old, were crossed with ranchu equal in number and also of the same age. The cross thus made produced about 300 young fish, of which some were like the oranda shishigashira in form. There were 20 entirely without the dorsal fin; but in a large majority of the young there were some traces of the dorsal fin, one to three spines or something like knobs being discernible in its place. Those without any dorsal fin were then selected for breeding purposes, and in their offspring were still found some with traces of dorsal fin such as the spines and knobs mentioned above. This variety without the dorsal fin has been kept breeding up to the present; and being requested by the breeder to give it an appropriate name, I called it "shukin" (literally "autumn brocade"). The adjective "shu" takes its rise in the breeder's name, Akiyama (Chinese, Shu-zan, i. e., "autumn hill"), and the "kin" signifies "brocade", the epithet being given on account of the beautiful bright color.
Note: This variety once became extinct, but breeder had tried to make similar variety by similar kind of crossing, resulting in new Shukin in these days.
However, the new Shukin lacks protuberances on the head unlikely to
classic Shukin.

以下訳
"シュウキン" - 1897年にこれまでにない特徴を持った新種が以下の方法によって作成された。3歳のオランダシシガシラ10匹と3歳のランチュウ10匹を交配させ、約300の稚魚ができた。あるものはオランダシシガシラに形が似ていた。20匹は完全に背びれがなかったが、ほとんどの物は背びれの痕跡(1~3個のひれすじや、こぶのようなもの)があった。このうち完全に背びれのないものを以降の飼育に選択した。これらの子供にはまだ背びれの痕跡(上で述べたような)が見られるものが出て来た。この背びれを欠いた変種は現在まで飼育されている。飼育者の秋山吉五郎氏が筆者にふさわしい名前を付けてほしいというので私はこれを"秋錦"と名付けた。"秋"は飼育者である秋山(音読みにするとシュウザン)氏から、"錦"はこの変種の美しい明るい色に由来している。

訳注: 本文中spineは脊椎の意味ですが文意的にrayのことと思われるのでひれすじと訳しました



金魚 シュウキン イラスト
シュウキン Shukin
From "Goldfish and their culture in Japan" (1910)


秋錦はオランダシシガシラとランチュウの交配により生まれたが、
この系統は絶滅している。

近年復元が試みられ、秋錦という品種は再び市場に出ているが、
その姿は秋山吉五郎氏が作った秋錦とは違い、肉こぶがない。


余談ー背びれについて
本書によると、背びれのないランチュウと背びれのあるオランダシシガシラを交配させ
300匹の子供をえて、そのうち20匹が異常だった。
仮に背びれを作る遺伝子が1つの場合、

上図のようになる。子供の背びれに異常が出たのだから背びれの異常は半優勢だと
予想できる。その後背びれのない個体を選択してもその子が微妙に背びれを持っていた
ということからも、背びれ(ある/なし)ではなく背びれ(大/小)という制御があるはず。
実際、
Epperleinら (2007年)の研究によると、サンショウウオの背びれの大小は
BMPというタンパク質が制御していて、局所的にBMPを加えるとそこだけ背びれが無くなり、逆に局所的にBMPの働きを抑えるとそこだけ背びれが大きくなる。
金魚の背びれについての詳細な研究はされていないけれど、似た様な仕組みで、
ランチュウではBMPシグナルのような背びれの成長を阻害するようなタンパク質の量が多くなってるのかもしれない。